引っ越しに縁起の良い日と新居のお清め:中国の「入厝」の手順
新居のお清めと引っ越しの日取りを、台湾の入居の儀式「入厝」に沿って整理します。引っ越し前・当日・その後の九つの手順となぜするのか、省けるか、先に泊まった場合や中古物件、旧暦七月の疑問にも答えます。
台湾では、新居に正式に住み始める日の一連の儀式を「入厝」と呼びます。引っ越しに縁起の良い日として暦に「宜入宅(入宅に宜し)」と書かれた日と時刻を選び、吉の時刻になったら家族そろって物を持って家に入り、明かりをつけ、火を使い、神や祖先を拝み、その夜は新居に泊まります。古い暦書に明記されているのは「日を選ぶこと」と「先に香火(祖先や神の位牌・香炉)を新居に迎えること」だけで、ほかは民間の習俗です。地域や家によってやり方が違うので、以下では一つずつ、なぜするのか、省けるのかを書きます。
日本でも、引っ越しの日を大安や天赦日・一粒万倍日で選んだり、盛り塩やお祓いで新居をお清めしたり、神棚をまつったりする人がいます。当サイトの日の選び方は六曜ではなく、中国の伝統的な暦書の宜忌に従います。
| 段階 | すること | 根拠 | 省けるか |
|---|---|---|---|
| 引っ越し前 | 日と時刻を選ぶ | 暦書に明記 | 省かないほうがよい。入厝の中心です |
| 引っ越し前 | 掃除、空にする | 暮らしの必要 | 掃除は省けない。お清めの儀式は省ける |
| 引っ越し前 | 持ち込む物とお供え物を用意 | 民間の習俗 | 簡単にしてよい |
| 当日 | 吉の時刻に家に入る、手ぶらで入らない | 民間の習俗 | 入り方は簡単にしてよい。時刻はなるべく守る |
| 当日 | 明かり・窓・火 | 火は暦書の「帰火」に対応、ほかは習俗 | 火を使うことはしたほうがよい |
| 当日 | 神・祖先・地基主を拝む | 香火を迎えるのは暦書に明記、地基主は台湾の習俗 | 家に神棚や位牌がなければ省ける |
| その後 | その夜泊まる、親しい人を食事に招く | 民間の習俗 | 招待は省ける |
引っ越し前:日を選ぶ、掃除する、物を用意する
1. 入宅に宜しい日と時刻を選ぶ。 暦書に根拠があるのはこの手順だけです。暦が入宅に宜しく、できれば移徙(いし、引っ越し)にも宜しい日を選びます。二つの言葉の違いは引っ越しの吉日:「入宅」「移徙」の違いをご覧ください。日は世帯主を基準にし、世帯主の干支(えと)に冲(ちゅう)する日を避けます。時刻は日中を選びます。民間では、家に入るその瞬間が時刻のなかに入っていればよく、その時間中ずっと運び込んでいる必要はありません。
2. 掃除して、物を片付ける。 新築なら工事のほこり、中古なら前の住人が残した物があるので、先にきれいにすると住み心地がよくなります。民間には塩・米・よもぎで家を清めるやり方もあり、日本の盛り塩に近いものですが、地域によって違います。したければすればよく、しなくても入厝には影響しません。
3. 持ち込む物を用意する。 よく挙がるのは米・塩・砂糖・水・新しい茶碗と箸・ほうきとちりとり・硬貨で、食べるのに困らない、甘く幸せな暮らし、手元にお金があるという意味を込めます。家によって品も数も違い、決まりはありません。特別な品を買う必要はなく、もともと使う予定の物で十分です。
当日:吉の時刻に入る、火を使う、拝む
4. 吉の時刻になったら、家族そろって家に入る。 民間では世帯主が先に入り、一人ひとりが何か一つ手に持って、手ぶらで新居に入らないようにします。良いものを運び入れるという意味です。家具や段ボールは数日前に運んでおき、当日は象徴的な物だけを持って入ってもかまいません。
5. 明かりをつけ、窓を開け、蛇口をひねる。 家が明るく、風が通り、水があるようにという意味の習俗で、ついでに電気と水道の確認にもなります。
6. 火を使って一品つくる。 甘いスープや団子をつくり、新居で最初の食事にする家庭が多いです。『協紀弁方書』巻三十五は暦書を引いて「入宅帰火」に触れていて、もとは祖先や神の香火を新居に移すことを指します。民間では火を起こして料理することも、その一部とされています。日本の引っ越し蕎麦も新居での最初の食事の習わしですが、こちらはご近所に配るものとして始まったとされ、意味は別です。ガスコンロがなければ、炊飯器で一品つくってもかまいません。
7. 神・祖先・地基主を拝む。 家に神や祖先の位牌がある場合は、暦書の意味どおり、先に香火を家に迎えて所定の位置に安置します。地基主(家の土地に宿る霊)を拝むのは台湾の習俗で、料理や果物を供えます。拝む時間は地域によってさまざまです。家に神棚や位牌がなく、拝む習慣もない場合は、この手順は省けます。
その後:その夜泊まる、親しい人を招く
8. その夜は新居に泊まる。 民間では、入厝の夜には誰かが泊まって、新居に人の気配をつくるといいます。少なくとも世帯主が一晩泊まれば、ほかの家族は数日遅れて来てもかまいません。
9. 親しい人を食事に招く。 台湾では入厝請客、香港では入伙飯といい、日本の新築祝いや新居のお披露目にあたります。喜びを分かち合うためのもので、儀式に必須ではありません。忙しければ少しあとに招いてかまいません。
ベッドには別の時刻があり、入厝と同じ日にしても、分けてもかまいません。ベッドの買い替えに吉日はある?「安床」の考え方をご覧ください。
正式にできないときの簡略版
最低限するのは三つです。入宅に宜しく世帯主に冲しない日を選ぶ。吉の時刻に米か水を手に持って家に入る。当日火を使って一食つくり、その夜泊まる。ほかの手順はすべて省けます。
よくある質問
先に新居に泊まって、あとで入厝をしてもいいですか。 民間の多くの説では、入厝の前は物を運ぶだけで泊まらず、最初の夜を正式に住み始める日に取っておくといいます。すでに住んでいる人は、入宅に宜しい日を選んで、火を使うことと拝むことをあとから行うのがよくある方法です。地域によって言うことが違うので、先に住んだからといって心配する必要はありません。
ベッドが先に届いてしまったら。 斜めに置いて壁に付けず、シーツも敷かずにおき、安床の時刻になったらまっすぐ据えるのがよくある方法です。配送日と安床の時刻はもともと分けられます。
中古物件や賃貸でもしたほうがいいですか。 暦書の日の選び方は新築か中古かを区別しません。民間には「中古は移徙で見る」という説もあり、入宅と移徙の両方が宜しい日を選べばどちらにも合います。賃貸なら、簡略版の三つだけでもかまいません。
妊娠中の人は入厝に参加してもいいですか。 古い暦書の日取りの条文に、妊娠中の人が入居してはいけないという決まりはありません。民間の言い伝えは地域によって違うので、参加するかどうかは家族で相談してください。重い物を運ぶ、高い所に上るといったことは、もともとほかの人に任せましょう。
旧暦七月(鬼月)に入厝してもいいですか。 中華圏では旧暦七月を霊を迎える「鬼月」として引っ越しを避ける人がいますが、暦書は旧暦七月をひと月まるごと宜しくないとはしていません。2027年の旧暦七月は新暦8月2日から31日で、当サイトが使う暦データでは、この期間にも入宅・移徙に宜しく、楊公忌・四離四絶・歳破・月破も避けた日が8日あります。七月を避けるのは習俗なので、年長者が気にするなら飛ばしてください。
吉の時刻は見たほうがいいですか。 見ることをおすすめします。当サイトが示す時刻は日中の黄道の時刻から、世帯主の干支に冲する時刻を除いたものです。
入厝の儀式をどこまでするかは、家ごとに決めてかまいません。本当に時間をかける価値があるのは日を選ぶことです。まず世帯主の生年月日で命盤を作成すると、ページの最後でその命盤に合わせて入宅の日を選べます。同じ入宅に宜しい日でも、世帯主によって結果が変わります。違いを生むのは、それぞれの盤の田宅宮と命宮です。